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2026.05.22

Column

「すね毛がキモい」は本当に正しいのか?- 東京都庁のハーフパンツ勤務炎上から読み解く、現代の美意識

2026年5月、東京都の小池百合子知事が記者会見で「ハーフパンツ勤務」を推奨しました。

参考:小池知事推奨の”ハーフパンツ勤務”、SNSで「きもい」拒否反応も…都庁担当者「現場にクレームなし」(弁護士ドットコムニュース)

暑さ対策の取り組み「東京クールビズ」の一環として、業務内容によってはハーフパンツの着用も認めるという方針です。
都庁が率先して実践する姿勢を示したことで注目が集まり、実際にハーフパンツで勤務する男性職員の姿も見受けられるようになりました。

しかしSNSは、静かに燃えております。

「きもい」「不快」——5,000万回表示されたリアクション

「職場でハーフパンツ おじさんはNG?」というテレビの特集がXに投稿され、5,000万回以上表示された上に、
コメント欄には「きもい」「不快」「目のやり場に困る」という声が並びました。

都庁の担当者は「現場にクレームなし」と答えておりますが、それでも、ニュースは拡散し続けています。

体毛は、本来「気持ち悪いもの」ではありません

ここで少し立ち止まって考えてみてください。

すね毛は、人間が生まれながらに持っているものです。特別なことは何もありません。それが今、5,000万回表示のニュースになり、「きもい」という言葉とともに語られています。

なぜでしょうか。

体毛が変わったわけではありません。ハーフパンツが悪いわけでもありません。

変わったのは、私たちの「見る目」です。

美容や身だしなみに対する意識が高まり、スキンケアをする男性が増え、「清潔感」の定義が少しずつ塗り替えられてきました。その積み重ねの結果として、かつては「普通」だったすね毛が、今では「気になるもの」として認識されるようになったのです。

これは個人の好き嫌いの話ではありません。

社会全体の美意識が、静かに、しかし確実に変わっているという現象です。

「私は気にならない」では、もう通用しない時代です

今回の炎上が突きつけているのは、ある不都合な現実です。

「あなた自身はいい。でも、見ている側は気にしています。」

自分が気にならないことと、周りが気にしていないことは、まったく別の話です。

服装、髪型、姿勢——私たちは日常的に、他者の目線を意識して身だしなみを整えていますよね。

それは「自分のため」であると同時に、「社会の中で生きるため」でもあります。

体毛の処理も、今まさにその領域に入ろうとしています。

かつて「ひげを剃る」ことは当たり前のマナーではありませんでした。

「爪を切る」ことも、「制汗剤をつける」ことも、最初は「意識の高い人がやること」でした。

それがいつしか「やらないと気になる」ものになっていったのです。

美意識の変化とは、そういうものです。ある日突然ではなく、じわじわと「普通」が塗り替えられていきます。

社会が、それを求め始めています

「ハーフパンツ勤務」の炎上は、その移行期を象徴する出来事として記憶されるかもしれません。

欧米ではすでに、男性が体毛を処理することは歯磨きや爪の手入れと同じ「身だしなみ」として定着しています。

日本でも、特に都市部を中心に、その意識は確実に広がっています。

重要なのは、これが「意識の高い人がやること」から「やっていないと目立つこと」へと変わりつつあるフェーズにあるということです。

都庁の担当者は「現場にクレームなし」と言いました。

しかしSNSには5,000万回分のリアクションがあります。

「クレームを言わない」と「気にしていない」は、まったく別のことです。

人は、不快に感じても声に出さないことの方が多いものです。ただ、心の中で静かに評価を下しています。

「きもい」という言葉が持つ、本当の意味

「きもい」は、感情的な言葉です。しかしその裏には、社会の美意識の変化という、極めて理性的なプロセスが存在しています。

体毛を「気持ち悪い」と感じることは、生物学的には不自然です。

しかし社会的には、今まさにそれが「普通の感覚」になろうとしています。

これを「おかしい」と言うことは簡単です。

しかし社会の変化に対して「おかしい」と言い続けることは、
かつてスマートフォンの普及に「そんなもの必要ない」と言い続けることと、本質的には変わりません。

社会が変わるとき、個人の「気にならない」は関係ありません。

「ハーフパンツ勤務」の炎上は、そのことを私たちに静かに、しかし明確に教えてくれています。